1





世界が真っ赤に染まる夕方。
学校は運動部の声が遠くから聞こえる程度で静まり返っていた。

そんな中、私と友達の美沙は家庭科室に残りお菓子つくりに励んでいた。
作っているのは私だけだが。



「美沙も作るの手伝ってよ!」

「あたしは食べるの専門!雅の作ったお菓子は絶品だもの!」

「はいはい、ありがとう。まったく、食べるためだけに入部したでしょ」



せいかーい!と美沙はえへへと笑う。
呆れながらも嬉しそうに私の作ったものを食べてくれる美沙は好きだ。

ちなみに今日のメニューはクッキーにカップケーキそしてプリンだ。

カップケーキは美沙の好物でプリンは私の好物。



「美沙、ケーキ焼けたよ」

「待ってましたっ!」


美沙は嬉しそうにケーキにトッピングしている。

そんな美沙を横目に私はクッキーとケーキの入った袋をカバンに仕舞い、冷蔵庫に向った。



「うん、ちゃんと固まってる。美味しそう・・・・・えへへ」

「ホント雅ってさープリン好きだよね」

「このカラメルとの甘さ、苦さの具合が美味しいんだよ!!美沙も一個食べる?」

「一個ね・・・・・・・・・残りの8個は全部食べるつもり?」

「え?当たり前じゃん」



美沙は溜め息をついて「太らない体質っていいよね」とどこか遠い目をした。



「さてと、一緒に食べよー・・・・・・・・って、え!?」



プリンの乗ったトレイを持って美沙のところに向おうとしたとき。

私の足元に床は無かった。



「ちょっ雅!?なんで・・・・!!」



美沙がケーキが落ちるのも気にせず走ってくる。



しかし、美沙の手が私の手に届くことは無かった。








先程まで、一緒に笑っていた友達が消えた家庭科室の中。

雅が落ちた穴はいつもどうり薄く汚れた床がある。



「う、そ・・・・・雅・・!!雅!!どこなの雅!!?なんで・・消えちゃって・・」



冷たい床に手をつく。


もう片方の手には・・・・・まだ温かいカップケーキが握られていた。



「雅・・・」











スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。